(あなた以外の全てが見える) 小内光 ソー・ソウエン2人展 _ 銀座蔦屋書店 GINZA ATRIUMTokyo2022.1.15 - 1.25
⾒間違いや思い込み、誰に何を伝え何を伝えないのかという選択は、この地球上で⽣きて他⼈と関わろうとしている限り全ての⼈に起こり続けています。他者を理解することが本質的に不可能だとしても、しかしここにいる「その⼈」が何を考え、持ち上げられた⼿が何をしようとしているのか、開かれた⼝が何を語ろうとしているのかを知りたいと強く願うことは、理解できる/できないという区分けとは全く別の、⾒晴らしのよい場所へ私たちを導きます。
作品もまた、そこに現れた時点で何者とも混ざり合うことはありません。それは作者であっても同じです。私たちがこの展覧会のために続けてきた対話や交換が、完結したフィクションである作品に実際にどのような影響を与えたかを確かめることはできません。
触れれば崩れてしまうパステルや、漂⽩され痛んだ布、署名のない⻩⾊い本、⼤きな⾷堂テーブル、焦げついた陶器のオブジェといったマテリアルは確かに空間に同時に存在しています。タイトルで切り分けられた作品と作品の間にあるもの、テキストには書かれなかったもの、それらは果たして本当に⽬には⾒えないのでしょうか?
そして⽬に⾒えなければ、誰かと共有できなければ、それらは確かにあったとは⾔えないのでしょうか?私たちがそこにいるとき、常に触れ合う境界には《私》でも《あなた》でもない存在があります。
ここでは⽔の中を泳ぐ⿂のように、その境界の移り変わりを肌で感じていただくことができればと願っています。
(ステートメント 小内光)
Photo by Arito Nishiki